9.
ひろくんは、ゆっくり山をのぼりました。
あたりが 黄緑から 緑色に かわってきたころ、やっと、あの山のてっぺんが見えてきました。
「あと少しで、てっぺんかな…。」
「もう、だれも いないのかな…。」
あと少し。
あと少し…。
あと少しでてっぺんに つくというところに、見おぼえのあるバケツが おちていました。
ついこのあいだまで、いっしょに あそんでいた友だちが かぶっていた バケツでした。
「…もうちょっとだったのに…」
「もう、だれもいないのかな…。」
ひろくんがてっぺんを見ると、今までなかった黒いものが見えました。
ひろくんをつれてきた、あの鳥でした。
【…こんにちは、ひろくん。】
「…こんにちは」
【みんながどうなったか、見てきたんだね?】
「うん…」
【きみたち雪だるまは、雪でできているんだ。だから、雪が 溶けるくらいに あたたかくなると、君たちも 溶けてしまうんだよ。】
「でも…じゃぁ、なんでぼくは溶けないの?」
【それが、私にも分からないんだよ。たしかにきみは、雪で作られていたのに…】
「ぼくは、これからどうなるの?」
【このままだと…ずっとこの山でくらすことになってしまうね。】
「…どうすれば、ぼくはみんなといっしょにいられるの?」
【それは…私にも分からない。】
「…」
【今日はね、ちょっと きみを しらべに来たんだ。ちょっと ごめんよ。】
そう言って、黒い鳥はひろくんのおなかの雪を、ちょっとだけ くちばしで取りました。
【う〜ん…やっぱり雪だよね…。おかしなところは…あれ?】
「どうしたの?」
【何か…きこえないかい?】
(…かえして…)
「…何か きこえる。」
(…みんなを かえして……)
【もしかして…。】
(…みんなの ところに かえして!…)
黒い鳥とひろくんが きいた声は…
黒い鳥のくちばしと。
ひろくんの おなか。
2つの雪の中から していました。