2.
夜。
まだまっ暗な空を、大きくて黒い鳥が とんでいます。
ひろくんが作った雪だるまは、その上で ねていました。
鳥は、とおくにある大きな山に向かって とんでいます。
山がちかくなるにつれ、同じように雪だるまを せなかに のせた黒い鳥が ふえてきました。
どの鳥も、雪だるまをその山に つれて行こうとしているようです。
「ぐーぐー ぐーぐー」
『おーい、そろそろ起きようよー。』
「…ん?」
『!やっと起きた!』
「…ここは どこ?」
『ひろくん、おぼえてないの?ここにいるみんな、きみといっしょに大きな鳥に つれてきてもらったんだよ。』
「そうなの?」
『そう。それで、きみを作った人がひろくんだから、きみの 名前もひろくんだって。その鳥が言ってた。』
「ふ〜ん…ぼく、何にも おぼえてないや。」
『みんなも、じぶんを つれてきてくれた鳥に おしえてもらっただけだから、あんまり おぼえてないんだ。』
「その鳥って、どこ?」
『ひろくんだけ起きなかったから、鳥は行っちゃったよ。』
「そうなんだ…ぼくもその鳥 見てみたかったな。」
『ときどき来るみたいだけど、いつもはみんなで あそんでなさいって言ってた。』
「毎日 あそんでていいの?」
『いいよって言ってたよ。』
「やったー!」
『あ、そういえばね。その鳥が一つだけ決まりを言ってたんだ。ひろくんが起きたら言っておいてって。』
「決まり?」
『あっちに、ちょっと高いところがあるでしょ?』
「うん。でも、てっぺんは くもにかくれて見えないね。」
『いつか、あの雲がなくなっててっぺんが見えるようになるんだって。そうしたら、あの山に向かってみんなでかけっこしなさいって言ってた。』
「かけっこ?」
『そう。1ばんだと、いいことがあるって。』
「なんだろう…たのしみだね」
『うん。さぁ、そろそろ あそびに行こう?みんな 向こうで まってるよ!』
「うん、行こう!」
ひろくんが走ると、そこには たくさんの雪だるまが いました。
ふとい枝が うでのかわりに ささっていて 重たそうな雪だるま。
転がしたままの雪球を のっけただけの、でこぼこの雪だるま。
茶色のどろや小石の まざった雪でできた、白くない雪だるま。
目も口も うでも あるけど、頭が ずれてしまっている雪だるま。
同じ かたちの雪だるまは一つもないけれど、みんなとても たのしそうに あそんでいます。
それは…
じぶんたちを 作ってくれた 人もいない、雪だるましかいない山の上。
雪だるまにとって、みんなと たのしく あそぶことだけが たのしみだったから…。
みんなが たのしくいられるためには、まわりの雪だるまの 見た目なんて かんけいなかったから…。
毎日のように、ひろくんたち雪だるまは たのしく あそびました。
雪の つもった原っぱで かくれんぼをした時は、みんな雪の中にかくれてだれも見つからなかったり。
スキーに出かけた雪だるまは、ころんでころがって もっと大きくなって かえってきたり。
あそぶことは ちがっても、とても たのしそうに あそんでいました。
そんなある日。
その日ひろくんは、みんなより少しだけ早く目がさめました。
「よ〜し!今日は みんなより さきに 行って、おどろかせてやろう!!」
そう言って、ひろくんは一人いつものひろばに走りました。
いつものひろば。
いつもと かわらない、まっ白なひろば。
いつもと かわらず、みんなと たのしく あそぶはずだったひろば。
そんなひろばについたひろくんの目に…
(てっぺんが見えるようになったら、あの山に向かってみんなでかけっこしなさいって言ってた)
あの山のてっぺんが見えていました。