14.
黄緑色が広がり。
ふかい緑色が広がり。
赤や茶色が広がり。
まっ白が広がり。
ひろくんは、なんどもなんども そんな けしきを見てきました。
なんど見たか、おぼえきれない くらいに。
そして今も、あの山のてっぺんから おりながら、黄緑色のひろばを見ています。
みんなが のこした、枝やバケツを あつめながら…。
【こんにちは、ひろくん】
その おきゃくさんは、ある日とつぜん やってきました。
「こんにちは、とりさん」
【何をしているんだい?】
「こんど みんなが来たときに、たからさがしに つかおうと思って。」
【それで、あつめてるんだね。】
「えぇ。山のちかくにあったら、あそびたいときに もって来られないから。」
【…あれ?山のてっぺんにバケツがあるよ?】
「あ、あれは…」
【よし!ぼくが とって来てあげよう!】
ばさっばさっ ばさっばさっ
「あ!それは…まって〜!」
ぱくっ
【これで…よし。】
ぽすっぽすっ ぽすっぽすっ
「ま、まって〜!」
【あれ?ひろくん?】
「そのバケツは…そのまま…」
【どうしてだい?】
「それは、じゅんくんのだから。」
【おともだちの?】
「うん。」
【どうして ここに?】
「じゅんくんと、ここでお別れしたから…。」
【その子も、ここまで来たの?】
「…うん。」
【ひろくんは、たまに ここに来るの?】
「たまに、お話をしに来るんだ。」
【なにを話すの?】
「きょうは きれいな お花ばたけを 見つけたよ、とか、きょうは 川にもぐっていたら 川がこおっちゃって とじこめられそうになったよ、とか。」
【あそんだことを話すんだ。】
「うん。」
【でも…なんで?】
「じゅんくんと やくそくしたんだ。」
【やくそく?】
「あたらしい あそびを見つけたら、おしえてあげるって」
【そうなんだ…。】
【ひろくんは…】
「?」
【今…たのしい?】
「…どうだろう。」
【…】
「たのしい、とは思う。けど…」
【…けど?】
「みんなと いっしょだったら、もっとたのしい…かな。」
【そっか…。】
「でもね。じゅんくんと やくそくしたから。ぼくが とけるまで、ひとりでも あそぶんだ。」
【…ひろくんの雪も、もう ひろくんのいうことを きいてくれても いいと おもうけど…】
「あ、それは もういいんだ。」
【…いいの?】
「じゅんくんがね。お別れするときに<もっと あそびたかった>って 言っていたんだ。」
【うん…。】
「ぼくは「はやく 溶けたい」と おもっていたのに、じゅんくんは<まだ 溶けたくない>って…」
【うん…。】
「いっしょにいたかった ぼくと じゅんくんでも、はんたいの ことを かんがえて いたのだから…」
【ひろくんと ひろくんの雪が ちがうことを かんがえていても、しかたない…】
「そういうこと。」
【そっか…。】
「ぼくの雪が(お別れしたくない)って言っているのだから、まんぞくするまで ともだちと あそんでほしいな って。」
【…】
【ひろくんは…】
「?」
【ひろくんは、それでいいの?】
「…うん。」
【ともだちと、いっしょに あそびたいでしょ?】
「それは…」
「もちろん、いっしょに あそびたいよ。」
いつのまにか、お日さまが しずもうとしています。
夕日の光に てらされて、
きれいなオレンジ色の中に立って、
少し さびしそうに、
それでも えがおを作った ひろくんは、
1つぶの なみだを ながしながら こたえました。
(みんなと ずっと いっしょにいたいって言ったけど…)
(ひろくん。きみとも お別れしたく なかったんだよ…。)
(でも、ぼくたちは これで じゅうぶん。)
(ありがとう…ひろくん。)
ひろくんに おれいを 言って、お別れしていく ひろくんの雪。
ひろくんは…
1つぶの なみだから…
ゆっくりと 溶けはじめました。