12.
ひろくんにとって3かいめの、まっ白な きせつが おわり、あの山のてっぺんが見える日が来ました。
みんなにとっては、まちに まった かけっこの日。
でも、ひろくんにとっては、また一人ぼっちになってしまう日。
げんきよくスタートする雪だるまたち。
ひろくんは、雪が溶けかけている ぎりぎりのところを走ることにしていました。
もう、うしろから みんなが溶けて行くところは見たくない。
でも、みんなを おいて自分だけ走ることも したくない。
ひろくんは、なやみつづけていました。
きっと、ひろくんのおかげでしょう。
今年の雪だるまたちは、みんな いつもより はやく走っていきます。
いつしか ひろくんも、たのしそうに走っていました。
でも。
それでも。
お日さまが あの山の向こうに しずむころには、雪だるまの かずは はんぶんくらいに なってしまいました。
つぎの日は、また はんぶんに。
そのつぎの日は、そのまた はんぶんに。
てっぺんが 大きく見えてきた4日目には、まだ走っている雪だるまは 10体ほどに なっていました。
でも、ひろくんは あきらめません。
きょねんは、もっと下のところで ぜんいん溶けてしまったから。
あと1日。
あと1日みんなが がんばってくれたら、溶けるまえに てっぺんに まにあうから。
その夜。
まわりは まっくら。
でも、ひろくんには わかります。
みんなが急に、はしるのが おそくなって きたことに。
そして。
ひろくんに おいぬかれて行ったことに。
朝。
まわりが 少しだけ、あかるく なりはじめたころ。
いつのまにか、雪がすっかり溶けてしまった しばふの上を走っている ひろくん。
その ひろくんの まわりに、雪だるまは 一つも ありませんでした。
「すぐそこに てっぺんが見えるのに…」
そう言って 見上げたてっぺん。
ほんの少し、まだ雪が のこっている てっぺん。
2年前は、何もなかった てっぺん。
1年目は、黒い鳥がいた てっぺん。
今年は…。
えがおの じゅんくんが いました。
<おそいよ〜ひろく〜ん!>
それは、たしかに じゅんくんでした。
「じゅんくん はやいよ〜!」
ひろくんは うれしくなって、もっともっと はやく走りました。
走って。
走って。
もっと走って。
じゅんくんに 手が とどきそうな ところまで来たひろくん。
そして、ひろくんと どうじに てっぺんにまで来た、黄緑色の しばふ。
ひろくんの目のまえで、ゆっくりと じゅんくんが 溶けはじめました…。