1.




お正月。

とあるホームセンターにて。


「なぁ ヒロ。本当にそれで良いのか?」

「うん、ぼく これがいい!」

「かわいいキャラクターのもあるぞ?」

「こっちの方が強そうで格好良いもん!」



ヒロくんが持っているのは、一つの凧。

鋭い鳥の目が描かれた凧。


「この目は…鷹かな?」

「たか?」

「そう。鳥の中でもとっても強いんだぞ?」

「そうなんだ!じゃぁ、この凧は“タカ”って呼ぼう!」


一目で気に入ったヒロくんは、その凧を持ってレジに並びました。



そして。

その凧を川原で引きずるヒロくん。


「ヒロ〜。それじゃ、凧は揚がらないぞ〜?」

「いっしょうけんめい、引っ張ってるのにぃ〜!」


初めて凧で遊ぶヒロくんは、何度走っても凧を揚げることができません。


「仕方ないな〜。じゃぁ、お父さんがお手本を見せてやろう」


自慢げなお父さんは、ヒロくんからひもを受け取って走り始めます。

すると、さっきまで地面で砂ぼこりを上げていた凧が空を舞い始めました。


ヒロくんはお父さんから糸をもらいました。

少しずつ糸を緩ませていくと、凧が少しずつ高く揚がっていきます。

めいっぱい糸を緩めた頃には、凧はとても小さくなってしまいました。



びゅーっ

風が吹くと、凧は少しだけ動きます。

すると、まだ小さいヒロくんの体は持ち上がりそうになります。



びゅーっ びゅーっ

少しだけ、風が強くなりました。

ヒロくんは、飛ばされないように ひもを強く持ちます。



ごーっ!!

突然、とても強い風が吹きました。



ふわっ

ヒロくんの体が浮きます。



ぱっ

ヒロくんは、思わず手を離してしまいました。



ゆらゆら ゆらゆら

ひもを放された凧は、流されていきます。


「おとうさ〜ん!タカが〜!!」

「あ〜…あれはもう、落ちてこないかな…」

「タカ、どうなっちゃうの?」

「風がやんだら、どこかに落ちていくかな」

「…戻って来る?」

「残念だけど、ヒロくんのところには戻って来ないかな…」

「せっかく買ってもらったのに…」

「…飛んで行ったのは仕方ない。次のは大事にしようね?」

「うん…」



…ごめんね…



凧が見えなくなるまで、ヒロくんはずっと空を見上げていました…。